先日コレクターの方から預かった簪一式の修理に取り掛かりました。
このような簪はおそらく「秋田簪」と呼ばれるもので、江戸時代秋田県では銀線細工の技術が
長崎から伝わり、簪などの装身具が盛んに作られるようになり、現在でもブローチやペンダント
といった身近な装身具と姿を変え、秋田県の伝統工芸品として残されています。
これまでもこのタイプの修理をしたことはありますが、今回の飾りは初めて見ました。
大変精密に作られている細工です。
ここまでの細工となると全てバラすのは大変な手間になってしまうので、
原形がどのように組まれていたのか探りながら、ある程度の部品を取り外します。
今回は銀の変色を取り除くため、バケツに入れたお湯にアルミホイルと塩の方法をとりました。
銀の変色は大気に含まれた硫黄分に反応し黒ずみが起こります。
細かいことまでは分からないのですが、硫化してしまった銀をこの液に漬けると何らかの?
化学反応が起こり黒ずみが落ちるのです。
バラせない細工モノやメッキを付けない銀製品などはこの方法でやります。
お湯に漬けると硫黄の匂いがしてきて不思議と黒ずみが消えていきます。
ただこれだけでピカピカになる訳ではありません。最後は手磨きです。
温泉に漬かりさっぱりしました~
これからが本番、取れた部分や折れ曲がった部分を地味~に直していきます。。。
直ってしまえばキレイなもの。。。これ1本づつ曲がりを直したんですよ。。。
しかし細工は見事!鶴もイキイキしてます。
まだ松葉の曲がりを組み直したりしますが、錺の原形が見えてきました。
しめ縄・熨斗・鶴・松竹梅と吉祥尽くしの錺かんざし。婚礼に使われたのでしょうかね。
これほどの技術や時間もありませんが、生涯中にこのような作品も手がけ残したいものです。